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2017年9月16日 (土)

J.K.メルツからのメッセージに関して

祝・現代のヴィルトゥオーソへ
(19世紀のヴィルトゥオーソからのメッセージ)
「J.K.メルツ」

Meltz

9月3日のアコラ・オータムフェスティバルでの本イベントについて書いておきます。

① メルツの生涯と作品

【メッセージ】
② ヴィルトゥオーソは誤解される? 
 メルツは19世紀の□□□□□□□
③ メルツは○○〇の江戸川乱歩、赤川次郎、
 池上彰のニュースそうだったのか
④ メルツ愛=〇〇〇愛

【演奏】
演奏:熊坂 勝行
・オペラレビューOp.8より 
ワーグナーのオペラ「さまよえるオランダ人」      

19世紀ギター(ラコートモデル) 演奏:細谷 寛子    
・吟遊詩人の調べ Op.13 より  「マルヴィーナへ 」
・3つの幻想曲 Op.65 より 「ル・ゴンドリエ 」

***

フェスは、3部構成で長丁場になるので、①メルツの生涯と作品については、演奏を聴きながら用意した資料に目を通していただくことにし、説明は省略した。

順番としては、「さまよえるオランダ人」の演奏、それから ②ヴィルトゥオーソは誤解される? 以下について話した。これが、メルツからのメッセージ。その後、細谷さんにメルツの代表的な作品を19世紀ギターで演奏していただいた。

【ワーグナーの「さまよえるオランダ人」】
見てわかるように(聴いていると難しく聞こえるが)、大変弾きやすくできている。
160年間位たぶん国内では弾かれていなかったのでは。
最初に弾いて思ったこと。オペラを聴くと、約2時間のオペラの最後の場面でハープで美しいアルペジオが演奏される。わずか1分間のために2時間待機している。こんなギターにもおいしいフレーズをメルツがどう料理するのか期待したが、それがないのでちょっと残念だった。しかし、この甘いフレーズはワーグナーの知らないところで改変されたものでオリジナルにはないことが分かった。そして、それはメルツが亡くなった後の出来事で、それ以降はこの改変版が標準となってしまった。つまり、メルツは当時のオペラをたぶん聴いて、その時代の中で編曲したものだった。貴重なワーグナーの原典版に基づいた編曲。

【メッセージ】
②ヴィルトゥオーソは誤解される? 
メルツは19世紀の□□□□□□□ 
答は、メルツは19世紀の「押尾コータロー」。 
出版されたものは、編曲作品が多く、美しく分かりやすい作品が多い。多様性、ギターで弾きやすく、当時として新しい奏法を披露。残念なことに、現在演奏されるのは限られた作品のみ。
ギターの本流、先立ってウィーンで活躍したジュリアーニ(ベートーベン、ロッシーニと親交)、マティエカ(シューベルトに影響を与えた)を受け継いでいるギタリスト。ショパンは「ギターは二重奏が最も美しい」と言ったという話(出典不明)があるが、メルツはショパンと出会ったのか? その可能性について、二重奏の手書き楽譜を紹介。
ソル、タレガがギター音楽を心の領域まで持って行ったのと対照的に、華やかな分かりやすい世界。サロンやギターマニア以外が多い演奏会でも面白く聴いてもらえる音楽。
ゴヤの絵にギターを弾く猿、聴こえないのに聴いているうさぎの風刺画があるが、これと対照的。メルツは演奏家(ヴィルティオーソ)として理解すべき。20世紀のヴィルティオーソのセゴビア、山下に対して、演奏パフォーマンスに触れずに、その作曲について注目することは意味がない。メルツ自身の演奏音源は当然残っていないので、メルツを自分で弾いてみて音にしてイメージすることが出来ていない人がまだ多いのだろう。

③メルツは○○〇の江戸川乱歩、赤川次郎、池上彰のニュースそうだったのか
ここでは、メルツのプロとしての仕事のやり方について、「シリーズもので人気を博した」ということを紹介。当時、CDもラジオもない時代、音楽に触れるのは生演奏しかなく、楽譜そして出版社は重要なメディア。メルツは各国の出版社から、それぞれ特徴あるシリーズものとして、発表(販売)して行った。

・Op.8 オペラレビュー(ウィーンから出版)  原曲を尊重した上でギターの特徴を活かした作品シリーズ。ウィーンに来てすぐにOp.8として最初の8曲を出版し、数曲ずつ追加され、亡くなるまでに34曲出版された。人気が高かったことがうかがわれる。重要な作品集。「さまよえるオランダ人」はOp.8の最後の作品。
当時まさに上演されていた音楽 先端の音楽をギター1つで楽しめるようにした。現代的意義はギタリストがオペラに親しむ、教養のためというだけでなく、歌曲の原点はこの時代のオペラにありギタリストもクラシック音楽としての歌について勉強になる。

・ギタリストのためのポートフォリオ(画帳) (ミュンヘンから出版)  ユニーク、大胆なギター効果、奏者のセンス、技量に依存する作品が多い。生かすも殺すも演奏者次第。

・Op.13 吟遊詩人の調べ 代表的なメルツの作曲集、小品集。生前に13冊に分けて出版され、死後2冊追加され、現在の形になっている。

・カッコー  各国の音楽、流行っているオペラ、大作曲家の音楽等をギター小品に編曲した曲集。12分冊、136曲。テクニック的に容易。 4小節4段=16小節という小品ながら良い曲がある。 一家に一冊おいて家族で楽しめるといった趣旨のもの。そうであっても、メルツらしく、音の響きでは妥協していない。今の私の一押し。

・ヨハンシュトラウス兄弟の選集  シュトラウスⅡは、1844年デビュー(19歳)、今でいえばディスコやクラブミュージックに当たる。そういったものをギター1台で楽しめるようにした。何曲か少し弾いたところピアソラを感じるところがあった。これからの私の研究課題。

シュトラウスのアメリカ独立100周年の祝典に係る大コンサート、10万人の聴衆、この時代でホール音楽も限界⇒野外フェス、現在のロックフェスの流れ。クラシックな楽器から電子への流れ。ジョンはこの辺を先取りしていたのか。19世紀ギター、モダンギター(これは20世紀ギターか)、21世紀はエレキか、と言った話題も用意していたが、省略。

④メルツ愛=〇〇〇愛  
ここは③と同じ○○○で、メルツ愛=ギター愛
メルツの曲をピアノで弾いたら、たぶん全くつまらない。ギターで弾いてもただ弾くだけでは、やはり メルツってこんなもんだということになるだろう。私にも潜入観があって、Op.8以前のものはハンガリー辺りでやっていたものをウィーンで出版したもので、ウィーンで洗練された音楽に触れOp.8あたりから勉強して良くなっていったというような。一般にも、Op.13がシューマン的な世界を持っておりメルツとしては最高、あとはろくな曲がないとの誤解がいまだにある。最近Youtubeにもいろいろ出てきているが、演奏によって全然違うので注意が必要。Op.4辺りにもいいものがある。

細谷さんから、メルツは譜面読みが難しいという話があり、かなり譜面に細かく情報がはいっているが、その一方でそれ以上のことが要求されるが、そのことは「メルツ愛」がないと見えてこない、というような話があった。
私も今回の「さまよえるオランダ人」は9頁のうちの7頁に絞って一部編曲している。もともとそういう変更を許すような譜面で演奏も自由にやっていたものと思われる。古い家に新しい家具を入れたり、カーテンの色を変えたりする感じ。演奏家の感性でちょっと手を入れる、ギターって何かいいねっていうものが出てくる。これがギター愛、すなわち、メルツ愛かなと思う。
 
【代表的作品の演奏】
・Op.13 吟遊詩人の調べ から「マルビーナへ」。
・メルツの死を惜しんで1857年に出版されたOp.65 3つの作品 (ハンガリー幻想曲、独創的幻想曲、ル・ゴンドリエ)。たぶん、これはメルツが自分で演奏するためのもので、出版する気はなかったと思うが、人気が高かったので出版されたのではないかと想像される。その中から、ル・ゴンドリエを演奏。

小暮さん、藤元さん、共に才能豊かで100年、200年後にも思い出されるようなヴィルティオーソになると思う。愛好家の方も含め、メルツからのメッセージが何か参考になれば大変嬉しいです。

 

【打上にて】

Img_6846


・小暮さんの、ハンガリー幻想曲のサプライズ演奏は、事前に少し聞いていましたが、「実は話の流れで、押尾コータローの曲を弾こうとちょっと思った」ということを小暮さんから聞いてびっくりしました。小暮さんは大学でクラシックギターを始めたのですが、その前にはアコギをやっており、押尾コータローはCD何枚も聞いて演奏も得意だそうです。小暮さんの演奏の魅力のバックグラウンドを感じました。初耳でした。知っていたら、アンコールでやってもらいたかったですね。
次回の楽しみができました! 
テオルボ演奏と押尾コータロー、凄すぎる!

・藤元さんと19世紀ギターの話になった時、メルツの曲を弾いていてまだ未検証ながら思っていることがあり、藤元さんに話しました。メルツの曲でメロディ音が高音で長く続いている静かな場面で、③⑤弦などを16分音符で交互に演奏するところがあり、静かな場面に似合わない。これは、メロディ弦に共鳴効果でエネルギーを与えメロディを持続させることを意図したものではないのかと。そうしたら、藤元さんから、ピアノでは普通にそういうことをやっているとの話がありました。19世紀ギターとピアノをやっている藤元さんならではです。現代のギターではあまりそういう効果はなかったのでレクチャーでは話題にしませんでしたが、シュタウファーのような楽器で試したらどうなのかと思っています。スラーの扱いなどについてもお話ができました。

演奏を聴くだけではもったいないので、こういった場を活用して短時間でもコミュニケーションは大切ですね。

・今回やってみて、皆さんの感想なども頂き、メルツについては思っていた以上に知られていないので、今回は時間の関係で省略した①メルツの生涯と作品について、は省略しないで、説明したほうが良かったかな、と思っています。
年代、あるいは曲集に沿って、曲を演奏していくようなスタイルも面白そうです。

・その後、当時のギター愛奏曲集というような数十頁の手書き譜を見たら、ソル、ジュリアーニなどにまじって、メルツの曲も数曲入っていたが、Mertz arr. と書かれていた。やはり、メルツは名演奏家、名アレンジャーだったようだ。

当時出版せすに手書き譜のまま残っていたオリジナル曲(最近は出版されているが)は貴重。ラファエラ・スミッツの名演奏が聴けるのは嬉しい。

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